

日本でも数々のCMに使われ、“声の神秘”と絶讃されたブルガリアの女性コーラスをまとめたアルバムであり、民族音楽としてではなく4ADの各作品とも共鳴しあう名盤。
民族音楽の研究者や熱心な音楽ファンには知られていたブルガリアの女声合唱が一般的に聞かれるようになったのには、4ADがリリースしたこのオムニバス・アルバムが大きな役割を果たした。
もともとクラシックのベルカント唱法などにこだわらない素人の農家の女性たちの地声コーラスによって生まれる複雑な美しさは一部の研究家には知られ、またフィールド録音なども進められていた。そんな音に4ADのオーナー、アイヴォが触れたのは、バウハウスのピーター・マーフィーが薦めたからで、数多く東欧やトルコへと旅してきたピーターはこの音楽の素晴らしさをしっかりと理解していたのだろう。
またアイヴォにしてもコクトー・ツインズやデッド・カン・ダンスらが作り出している歌の世界を重ね合わせると、音の響きとしてはまったくかけ離れたものとはいえず、スムースに受け入れることができたに違いない。
民族音楽を主体としているレーベルからはさまざまなブルガリア・コーラスものも出ているが、これはマルセル・セリエというスイス人が15年以上かけてブルガリア各地で収録した音源がもととなっている。いずれもプロの歌手ではなく、各地のコンテストの優勝者などで多彩な合唱を繰り広げるものから独唱ものなどが収められている。
基本的には各地方の古くから伝承されている曲ばかりなのだが、民族音楽的な部分とは別にどこか新しい感覚が漂うのは4ADからのリリースというのも影響しているのかもしれない。このアルバムが紹介された当時はワールド・ミュージックへの興味も高まっていた時期でもあり、その点でも話題は大きく広がったのだが、今聴いてもとても癒される一枚だ。
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