

アンダーグラウンドの伝説的なディーヴァがベガーズ・バンケットに唯一、残した85年に発表されたアルバム。彼女ならではのダークな世界が展開する一枚。
アラン・ドロン、ボブ・ディラン、ルー・リードといった人々との恋愛を繰り返しながら、自身の音楽表現を追求し続けたのが伝説のディーヴァがニコだ。1938年にドイツで生まれ、十代の頃からモデルとして活躍を始め、パリでは映画にも出演するなどしていた。その後、音楽活動を目指すようになり、ジミー・ペイジのプロデュースでシングルを作るなどしていたが、アメリカに渡りアンディ・ウォーホールとの交流を得てルー・リード、ジョン・ケイル等のヴェルヴェット・アンダーグラウンドに参加し、アルバム一枚を作る。
ソロとなってからもジョン・ケイルを始めとしてさまざまなミュージシャンたちのサポートを受けながら、彼女自身の重い歌声を生かしたアルバムを発表し続ける。しかしドラッグへの耽溺もひどく、コンスタントな活動が難しく、カリスマ的な人気は高まる一方だったが、その知名度にふさわしい作品作りがだんだんと困難になっていく。不安定な70年代後半を経て、落ち着いたのが80年代に入った頃からで、本作はマンチェスターに居を構え、当地の若手ミュージシャン等をバックにジョン・ケイルのプロデュースのもとで作られたものだった。
当然ケイルが口をきいてベガーズ・バンケットからの発売ということになったのだろうが、簡素なエレクトロニクス・サウンドをバックにして独特の歌声を響かせるアルバムは、彼女の魅力を巧く引き出しており、これを発表してから約3年後に亡くなっていることを考えると非常に貴重なアルバムと言えるし、彼女の晩年を代表する作品である。


