

シェイクスピアの『ハムレット』の一節から取られた名を持つディス・モータル・コイルは4ADのオーナー、アイヴォの夢を現実化したプロジェクトであったが、結果として4AD屈指の美しいアルバムが誕生した。
プロジェクトの原点は見過ごされたり忘れられた新旧の佳曲に改めて光りをあてたいというアイヴォ・ワッツ・ラッセルの夢の実現であった。その夢のためにコクトー・ツインズ、デッド・カン・ダンス、カラーボックス、ウルフガング・プレスといったレーベルの主要バンドのメンバーたちが全面的に協力して誕生したのが、このファースト・アルバムであり、結果として初期4ADのさまざまな魅力が集結したようなプロジェクトとなった。
ここでピックアップされたのはアレックス・チルトン、ティム・バックリー(ジェフ・バックリーの父)、ロイ・ハーパーといったベテランのカルト・シンガーたちの名曲やリマ・リマ、コリン・ニューマン(ザ・ワイアー)といった新しいアーティストたちのナンバーであり、さらに自身のグループ、デッド・カン・ダンスよりもこちらの方が合うということで、現在、映画作曲家として大人気のリサ・ジェラードが提供したものなどが収められている。またそれらのトラックをつなぐような役割としてディス・モータル・コイル作となる荘厳なインストが加えられ、アルバムとしての統一感を高めている。
その静謐な世界はいかにも4ADらしいものであり評判も高く、レーベルのイメージをさらに気高いものとした。その好評に気をよくして2,3枚目と作られていくが、参加メンバーがどんどんと変わり、さらにアイヴォ色が強まったりと魅力の幅を広げていき、それらも素晴しい作品ばかりである。ただ、その魅力の原点であり、凝縮した美しさに満ちたこのファースト・アルバムからスタートして聴き進めるのがベストだろう。

